みなさんは、中村哲さんという方をご存知でしょうか。先日ニュースを見ていた時に、この方の特集が放送されていました。日本ではなく、アフガニスタンで活動された医師です。医師でありながら、用水路の建設を行い、実に65万人ものアフガニスタン人を救ったと言われている方です。
なぜ医師が用水路で人を救うことができたのか。今回は、この「中村哲さん」について少しご紹介したいと思います。
もともとはアフガニスタンで現地の人々の治療にあたっていたのですが、治療をしても治療をしても、患者は増えるばかり。その原因がどこにあるのか、中村医師が考えた結果、彼がたどりついた結論は「水」でした。清潔な水は、人々の健康を維持し、作物を育てることができます。アフガニスタンの土地は、干ばつによる水不足が原因で、作物がうまく育ちません。そこで彼は、用水路を作り、川から水を引くことを考えました。その名も「緑の大地計画」。知識0の状態から、独学で河川工学を勉強したそうです。
暮らしを豊かにしたいと集まった現地の人々およそ600人と協力して、用水路建設が始まりました。現地の人々が自分たちの手だけで水路を維持できるように、重機は使わず、つるはしやハンマーなど人力に頼る道具を使い、護岸(水の浸食作用を防ぐ壁のようなもの)には、コンクリートではなく、「蛇籠(じゃかご)」という筒状の網に石を詰める日本の伝統的な治水技術を利用し、7年かけて用水路を完成させました。用水路の長さ、なんと25.5キロ。荒れた大地に蘇った田畑およそ3500ヘクタール。小麦やとうもろこし、およそ2万7000トンの生産が可能となり、これは15万人ぶんの食料に相当するそうです。
カブ、にんじん、大根、野菜の収穫も始まり、その野菜を売って現金収入を得る農民も増え、暮らしが豊かになったという人々がたくさんでてきました。
そこに家をつくり、学校をつくり、村をつくり、人々が安心して豊かに暮らせる場所を提供し続けた中村医師でしたが、2019年にアフガニスタンでテロに巻き込まれ、志半ばでこの世を去ってしまいました。
同じ日本人として、本当に誇りに思います。紛争の続くアフガニスタンという地で、人々のために尽力されたこの中村医師の想いを、今後もアフガニスタンの方々には受け継いでいってほしいと願うばかりです。
現地の方がこんなことを言っていました。
「お腹がいっぱいになれば、みんな戦争のことは考えない。」
私たち日本人は、本当に恵まれた環境にいるということを改めて感じました。
「学ぶ」ことは誰かを救うことができる。「技術をもつ」ことは、暮らしを豊かにすることができる。過去から学び、未来に繋げる。これは、勉強することの本質の1つでもあると私は思います。